シアターコクーン・オンレパートリー2010『上海バンスキング』2010年03月18日 23時55分05秒

1979年に初演され、一世を風靡した音楽劇の傑作。16年前に封印された作品に主要キャストが再結集して、“奇跡の再演”成る。

18歳時に上京して芝居通いを始める前から平岡正明の劇評やNHKの舞台中継でこの作品のことは知っていた。ジャズバンドに扮した劇団メンバーで収録したLPレコードも愛聴していた。にも関わらず生の舞台だけは観たことがなかった。幾度も再演されていたのだから機会はあっただろうに、なぜか縁遠かったのだ。その舞台に初めて出会う。しかも千秋楽の舞台だ。

それぞれの楽器を手に集まってくる役者たち。串田和美、笹野高史、小日向文世、大森博……。オンシアター自由劇場解散後も充実した活動を続けている面々だけに顔見世興行のような豪華さ。「SP盤の声がする」と評された吉田日出子の歌声も健在。テーマソング『ウェルカム上海』が始まれば、それだけで胸が熱くなるというもの。皆、実年齢よりもずっと若い役を演じてることになるが違和感はない。同時に年輪を刻んだ深みも感じられ、優れた戯曲と併せ豊穣な香りがする3時間である。

甘くて苦いドラマの果て、カーテンコールは賑やかに。だが、客席に落ち着きがない。最後のロビー演奏があることを知っていて良い場所を確保しようとするリピーターたちが、まだ舞台上では演奏が続いているのに席を立っていくからだ。確かに特別な感じのするロビー演奏を間近で見たい気持ちも分るが、ひょっとしたらこれが最後になるかもしれない『上海バンスキング』のカーテンコールから眼を離し、耳を逸らして平気なのだろうか、この人たちは。

観客であふれんばかりの終演後のロビー。高々と携帯電話のカメラを掲げて、演奏する役者たちを撮影することにばかり熱心な観客たちの姿に、素敵な舞台に立ち会えた充実感がちょっと萎えた。

3月14日@シアターコクーン