金子修介監督作品『ばかもの』 ― 2011年01月29日 00時02分30秒
地方都市に生まれ育った三流大学に通う青年が主人公。彼の19歳から29歳までの10年に渡る彷徨を描いた作品。主演の成宮君が、巧く大人になっていくことができない青年を演じて秀逸。ちょっとガサツな風情のファム・ファタルを演じた内田有紀とともに、その愚かさが愛おしい。
映画化にあたり時代設定を99年から09年に移したために、新興宗教にのみ込まれていく美少女(中村ゆり)のエピソードがそのモデルであろうオウム真理教事件とタイムラグを生じていたのは気になったが、大きな瑕疵ではあるまい。ゼロ年代の荒涼とした地方都市の空気感を描いた秀作群のひとつに加えていい。
たまたま同じ日に見た『酔いがさめたら、うちに帰ろう』と同じくアルコール依存症を題材にしており、不勉強で知らなかった抗酒剤なるものが、どちらにも登場していた。映画としては艶やかさのある分、『ばかもの』の勝ち。
1月4日@シルバー劇場
東陽一監督作品『酔いがさめたら、うちに帰ろう』 ― 2011年01月28日 18時14分29秒
一連のサイバラ映画シリーズのひとつと位置付けてもいいが、正確には西原理恵子の夫だった故・鴨志田穣の私小説が原作。浅野忠信・永作博美の強力タッグで悪かろうはずはなかったのだが、いまひとつ魅力を感じなかった。
西原理恵子の自伝的作品群は、夢や希望に逃げ込むことが許されない貧しさや不幸に満ちてはいるが、常に鮮やかな色彩で彩られている。『女の子ものがたり』『パーマネント野ばら』といったサイバラ映画は、その色彩感覚がしっかりと映像に活かされていたから成功したのだろう。鴨志田原作のこ映画にはその独特の色彩を持ち合せていないために、アルコール依存症の啓発映画の域を出ることができなかったと思う。
1月4日@シルバー劇場
トラン・アン・ユン監督作品『ノルウェイの森』 ― 2011年01月24日 20時48分54秒
日本での公開初日に映画館に駆けつけた。ものすごく映画的でありつつ小説世界に浸ったような満足感もあり。日本の映画ではないようでもあり日本映画黄金期の端正な美しさも備えている。
村上隆氏(=Twitterでこの作品を絶賛していた)の著書『芸術闘争論』の中に「作品作りは執念の具現化」という表現があるが、『ノルウェイの森』はまさにそのような映画だった。全ての場面、構図、カットが徹底的にこだわり抜かれている。そのこだわりは計算と呼ぶのは似つかわしくない、やはり執念と呼ぶしかないものだ。だからこそこの映画はとてつもなく美しい。
実は『ノルウェイの森』を観た翌日に、別の、一部ではとても高い評価を得ている映画を観たのだが、耐えられなかった。私はけっして完成度の高い映画だけが好きなわけではなく、むしろ粗削りでも強度のある作品を愛しているつもりだが、『ノルウェイの森』のトラン・アン・ユンとリー・ピンビン(撮影)の妥協なき映像の記憶があまりに鮮明だったこの日は、例え全く違う魅力のある作品であっても、あまりに見劣りがしてしまったのだ。
私は村上春樹の熱心な読者ではない。『ノルウェイの森』も初版を買って読んではいるが、何度も再読して耽溺したわけではない。また、私はミーハーな映画ファンであり、素敵な女優のワンシーンだけでその映画を絶賛してしまうような奴だが、『ノルウェイの森』の菊池凛子や水原希子はけっして私の好みではなく、そうしたときめきを覚えたわけではない。にもかかわらず、私は二度も映画館に足を運んだ。ただただ、この映画をスクリーンで観たい、そう思ったからだ。この映画にそれだけの魅力があったからだ。
12月11日、29日@ワーナーマイカルシネマズ津
井上剛監督作品『その街のこども劇場版』 ― 2010年12月12日 11時01分32秒
NHKで放映された阪神・淡路大震災15年特集ドラマが異例の劇場公開。今年初めの放送時点で気になってHDDに録画はしたのだが、観るタイミングを逸しているうちに劇場版の情報が入ったので、関西先行公開まで待って映画館に出かけた次第。
大勢の人々を巻き込んだ未曾有の大災害。素材自体は悲劇なのだが、この作品はある種の幸運に恵まれたものだと感じる。極めてデリケートな題材が、こわれものを扱うような繊細な手つきで映像に紡がれてゆく。渡辺あや脚本と、被災体験を持つ森山未來、佐藤江梨子の演技は、まるでドキュメントと見紛うようだ。何かに導かれるようにこの作品に集まった才能たち、その精妙なバランスによって成り立っている、ささやかな奇跡のような映画だと思う。
11月23日@シネ・リーブル梅田
廣木隆一監督作品『雷桜』 ― 2010年12月11日 13時11分07秒
うーむ。『ヴァイブレータ』の廣木隆一も雇われ仕事だとこの程度なのか。蒼井優好演とどこかの映画評を読んでちょっと期待したのだが、この程度なら想定内だし。近頃の時代劇映画は妙にだだっ広い風景を探してきてロケしてるのが多いけど、どれもこれも大味で画力が弱い印象を受ける。
11月18日@ワーナーマイカルシネマズ津