井口昇×西村喜廣×坂口拓監督作品『戦闘少女 血の鉄仮面伝説』2010年06月06日 23時34分23秒

『片腕マシンガール』の井口昇を中心に、特殊効果の西村喜廣、アクションの坂口拓という低予算マニアック映画界・3巨匠がコラボレーションした作品。

まあ、相変わらずのバカ映画ではあるのだが、豪華(?)監督陣にふさわしくキャストもB級なりにちょびっとグレードアップ。杉本有美・森田涼花・高山侑子の3ヒロインはスーパー戦隊モノやNHK出演経験もあるラインナップとなっている。ことにメインとなる杉本有美はなかなかの美形で◎。

5月23日@シネマスコーレ

蜷川幸雄演出『ムサシ ロンドン・NYバージョン』2010年06月07日 00時00分08秒

井上ひさしが蜷川幸雄に書き下ろした最初で最後の作品『ムサシ』。2009年に初演された舞台が早くも再演。しかも海外公演つき。5月初めのロンドン公演を終えたカンパニーがひとまずさいたまに凱旋し、この後、ニューヨークへ飛び立つ。二大巨匠の冒険だ。

だが、その舞台を待つことなく、この4月に井上ひさしは逝った。予期せぬ追悼公演。彼は自分が書いた作品でも初日以降は当日券売り場に並んだのだそうだ。稀代の台本作者の魂魄はロンドン~さいたま~ニューヨークの旅に寄り添っているに違いない。

初演は開幕直前にホンが仕上がるという状況下ながら、選び抜かれた言葉ととびきりの俳優たち、さらに情熱あふれる演出家の腕力で実に面白い舞台になっていたが、再演はさらに熟成されて大満足。藤原竜也の武蔵は一段と堂々としたものになったし、佐々木小次郎役に挑戦した勝地涼も「痩せた野良犬のように」という蜷川の注文に応える健闘。初演時は白石加代子に必死でくらいついていた鈴木杏、今回は自らの足で立った印象で立派。六平直政も飄々とした愛嬌で新たな沢庵を造形。吉田鋼太郎、大石継太も含め、俳優陣の魅力は初演に勝るとも劣らない。だ、がこうした役者の個性がいい意味で後景に退き、作品そのものの魅力が一段と際立ったのも今回の特徴だろう。このカンパニーが作者へ捧げる敬愛が全編に深く染み渡っている。

再演なのでネタばれも許されるだろうから書くが、この物語で武蔵・小次郎に再戦を思いとどまらせるのは死者たちである。作者がどんな思いで書いたかは知らず、今、井上ひさしはまさにそうした死者たちの一人として私たちに語りかけてくる。「殺すな」「殺されるな」。ストレートなメッセージに心揺さぶられる。

5月29日@彩の国さいたま芸術劇場大ホール

劇団、本谷有希子『甘え』2010年06月08日 12時54分14秒

主演に迎えられた小池栄子を先週、映画『パーマネント野ばら』で観ていたせいなのだが、本谷有希子の新作の中に、西原理恵子作品に共通するものを感じながら観ていた(あ、『パーマネント…』の監督・吉田大八の前作は本谷『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』だった)。

母が去った家で父と二人で暮らすヒロイン(小池)、その女友だち(安藤玉恵)、父と新たに関係を持ち始めた女(広岡由里子)。それぞれの生の在り様は、どこかで『女の子ものがたり』や『パーマネント…』とつながっている。

つらつら慮るに、モトヤもサイバラも私にとっては異質なもの、他者に出会うことのできる作品としての意味が大きい。そこに登場する女性たちの生の受け入れ方、拒み方は私の中にはないプログラムだ。だからこそ出会う価値がある、世界を知るためにはこれを観なければならない、と感じさせる。

だが、この作品は父・娘関係が大きな軸になっていたせいか、過去の舞台ほど十分に腑に落ちるところまではいかなかった。作品の出来というよりは私との相性ということだろう。

5月30日@青山円形劇場名

三浦大輔作・演出『裏切りの街』2010年06月09日 23時17分21秒

ポツドール三浦大輔がPARCOプロデュース公演に登場。3時間超の芝居を飽きさせないで運ぶあたり、劇作家としての構成力は高そう。物語の流れや演劇表現としての新鮮さには乏しい印象だったが、そこに描かれる人々が現代的で独特。演劇ライターの徳永京子はシアターガイド6月号で「熱を持たずに生きる人々」「低温の世界」と評していた。なるほど。医療の世界には低体温療法というものが存在する。この登場人物たちも、自ら低体温で居ることで生きづらさをギリギリでしのいでいるのだろうか。

舞台出演3本目の田中圭、健闘。相手役・秋山菜津子がさすがの安定感でこれを支える。松尾スズキはちょっと面白過ぎ? 安藤サクラと江口のりこって雰囲気が似過ぎ? わざと?

6月6日@森ノ宮ピロティホール

中島哲也監督作品『告白』2010年06月15日 22時16分54秒

完璧にコントロールされた作品。素晴らしく面白い。

冒頭の教室場面からまるでクライマックスのようなテンション。およそ20分ほどだろうか、主人公である教師・森口(松たか子)の“告白”シーンだけでも凡百の映画を吹き飛ばす。前作『ヴィヨンの妻』で映画女優としての豊かな表現力を見せた松たか子が、ここでは一転、抑制のきいた演技で難しい役を成立させている。

中盤以降は、その他の登場人物たちの“告白”をつなぎ、また重ね合わせながら展開。松以外の俳優たちも健闘し、高い緊張感を維持したままで物語はスリリングに運ばれてゆく。見事なリズム。中島演出が冴えわたる。

原作本も入手していたのだが、映画を先に観ることを選択した。まだ原作小説には手をつけていないのだが、この選択は間違っていなかったのではないかと思っている。先入観なしにこの映画を堪能できたことは良かったと思うし、恐らく原作の凄みは映画を観た後で読んでも損なわれていないのではないかと想像できるからだ。

6月11日@ワーナーマイカルシネマズ津