シス・カンパニー『At Home At The Zoo』 ― 2010年07月20日 00時24分07秒
エドワード・オルビー作。処女作にして代表作の『動物園物語』に、半世紀を経てオルビー自身がその直前の物語を書き加えた作品の本邦初演。その第一幕「ホームライフ」が堤真一と小泉今日子、第二幕という位置付けになった「動物園物語」が堤真一と大森南朋、二人芝居×2という構成。演出は千葉哲也。気持ち、tptライクな陣容。
「動物園物語」が演劇史上に残る傑作とまでの評価がある分、「ホームライフ」が付け加えられたことには賛否両論あるらしい。でも今回の舞台、私には「ホームライフ」の方が下世話な意味で腑に落ちるものだった。40代の夫婦ふたりの行き違う感情と言葉を、緊密な二人芝居で見せつけられるというのは、ある意味、たまりません。ガマの油的時間。
肝心(?)の「動物園物語」は堤が受けの芝居に終止せざるを得ない戯曲で、大森南朋ちゃんの長セリフが大半を占めるんだけど、もう一つ引き込まれず。
7月10日@シアタートラム
蜷川幸雄演出『ファウストの悲劇』 ― 2010年07月21日 00時30分20秒
シェイクスピアにちょっと先行する劇作家クリストファー・マーロウの作品。映画『恋に落ちたシェイクスピア』でルパート・エヴェレットが演じていたのを記憶しているが作品は初見。
エリザベス朝時代の戯曲なわけだが、蜷川版の幕が開くとそこには『天保十二年のシェイクスピア』を始めとする井上ひさし初期戯曲×蜷川シリーズのような賑やかな世界が展開。後でパンフの蜷川発言を読んだら、やはりそういう意図はあったようだ。蜷川演出には珍しくフライングも多用する等、久しぶりにケレンあるビジュアルが楽しめる。
メインキャストに野村萬斎、白井晃、長塚圭史といった演出家としての比重も高くなっている面々を起用。これもまた蜷川スクールの一環?
この戯曲の上演を提案したのは蜷川自身ではなくプロデューサーのようだが、蜷川はかなり自分に引き付けて解釈した印象。タイトルロールを演じた萬斎は持ち前の不遜な雰囲気でファウストを造形。蜷川演出とがっぷり四つ、というよりも蜷川自身の憑り代をつとめているかのよう。
そのファウストをインチキ呼ばわりする騎士ベンヴォーリオに新世代の演出家である長塚を配したあたりが面白い。
7月11日@シアターコクーン
イ・ヘジュン監督作品『彼とわたしの漂流日記』 ― 2010年07月22日 08時41分42秒
日本公開直前までノーマークで、ほとんどはずみで観に行った韓国映画なのだが、これがなかなかの秀作。イ・ヘジュンはこれが単独監督デビュー作だが『南極日記』等の脚本を手掛けたキャリアを持つ。もちろん本作も自身の脚本。
自殺を試みた主人公がソウルを流れる大河・漢江にあるパム島に“漂着”する。生態景観保護区として立ち入り禁止になっているこの島を、都会の真ん中にある無人島と見立てたアイデアが秀逸。ヒロインは引きこもりでネット依存、月の写真を毎日撮影している孤独な少女(英語題は『Castaway on the Moon』=月の上の漂流者)。やがてこの二人に密やかな交流が育まれていく。それぞれ、チョン・ジェヨン、チョン・リョウォンが好演。
巧みなユーモアを交えながら、絶望の淵から希望への扉を開く営為を描いて鮮やか。
7月19日@シルバー劇場
吉田恵輔監督作品『さんかく』 ― 2010年07月23日 12時52分45秒
おっさん向け妄想ラブコメと思って笑いながら見ていたら、中盤から意外なテイストに物語が発展。これは監督の狙いのようだ。後半はなかなかに重くて痛い展開になるのだが、好配役もあってギリギリのところで作品として成立している。綱渡りだがこれはこれで成功なのだろう。
特に主人公たちがストーカー的行為に陥ってしまう描写は出色。ストーキングという病的な行為が、ありふれた日常と地続きであることを実感させたのはお手柄。
自身で脚本も手がけた吉田監督はキム・ギドク『弓』が好きなのだそうだ。なるほどね。思い切り納得。
7月19日@伏見ミリオン座
本広克行監督作品『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』 ― 2010年07月24日 13時50分37秒
1997年のTVシリーズのファンだったので今回も一応、足を運んだ。「一応」というのは映画版の『踊る…』は、妙に人気コンテンツになっちゃってからの天狗っぷりが鼻につくところがあって、一歩引いて観てきたからだ。私はこの作品にスケールの大きさなんか求めていないし、マニア受けを狙った小ネタが好きで観ていたわけでもないもん。
で、7年ぶりの新作映画版であるが、その鼻につく感じがちょっと抑えられた印象でわりと素直に楽しめた。登場人物たちも大人になったが、スタッフも大人になった? それとも観てる私がか?
犯人=被疑者の人物造形が甘いので、そういう意味でのクライマックスは物足りなかったし、室井管理官の今、という部分もいまいち浅かったので不満がないわけではないが、長期シリーズならではの味わいを楽しんだ印象。調子を崩していた青島が復活し、お馴染のコートをひっつかんで走り出す場面なんかはたまらないものあり。10年以上変わらない青島君とすみれさんの関係性も何とも言えず。このふたりの場面が一番好きかな。
98年の番外編ドラマスペシャル以来の登場となる内田有紀がさらっとチーム入りしていたのが嬉しいが、一方で演劇界に身を投じちゃった水野美紀の出演がなかったのは寂しいところ。
実行犯の主犯があの俳優だと気がついた時にはやられたと思った。
7月22日@ワーナーマイカルシネマズ津