村上龍著『半島を出よ』 ― 2005年08月21日 23時00分36秒
最近は小説の単行本を買うことはめったになくなったのだが、村上龍は新作を読み続けている数少ない作家のひとり。上下2巻の長編なので手をつけるのこそ遅くなったが、詳細な取材に基づいた前半の構築力、一気に読ませる後半の展開と、期待どおりの面白さに満足。
章ごとに、描写の中心になる人物が代わってゆくスタイルがひとつの特徴。この物語には複眼的な視点が必要と判断したのだろう。そのため登場人物が非常に多くなっているのだが、個々の人物造形に厚みがあるために興がそがれることはない。ことに中年以上の人物や、けしてヒロイックではない人物の描写に、以前にはなかった魅力が出るようになった。これが本作の成功のひとつの要因だろう。村上龍独特のエネルギーとある種の稚気は保持されたまま、成熟も感じさせる作品になっている。
8月18日読了
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全然関係ないけど、最近読んだ小説でもうひとつ面白かったのは町田康『告白』。主人公(河内音頭で有名な“河内十人斬り”の城戸熊太郎)の心理に徹底的に密着し、これを独特の文体で、詳細かつミもフタもなく描いて圧巻である。