PARCO劇場「新」スタンダードシリーズ『ドレッサー』 ― 2005年09月13日 18時31分46秒
タイトルの『ドレッサー』とは、いわゆる役者の付き人のこと。この芝居の主人公は、ベテラン・シェイクスピア俳優である“座長”のドレッサーを長年勤めてきた男・ノーマンである。しかし今回の舞台は、座長を演じた平幹二朗が圧倒的だ。
平自身、数々のシェイクスピア劇を演じてきた日本屈指の俳優であり、観客の多くがその舞台に接してきただろう。芝居の冒頭、ノーマンと座長夫人が、まだ登場していない“座長”について話している場面で、すでに我々の頭の中には“座長=平幹二朗”のくっきりとしたイメージが描きだされる。
そして座長が舞台上、登場人物たちにとっての「楽屋」に現れる。劇中で演じられる「リア王」の幕が開くまでが『ドレッサー』の「第一幕」、上演から終演後までの楽屋及び舞台裏の情景が「第二幕」になる。休憩含めて3時間近い芝居でダレる隙がないのは、戯曲がよくできていることもあるが、なにより「役者という特殊」と「老いという普遍」が一体となった平幹二朗の一挙手一投足から目が離せないからだ。
この芝居は1988年・1989年の松竹製作のものを観ているのだが、観客である私自身が年齢を重ねたことによっても、10数年前とは“見えるもの”が変わってきたのだろう。以前はノーマンの視線でしか見ていなかった気がするが、今は座長の言葉もまた身に沁みるのだ。これも、時を経て名作に再会する時の楽しみのひとつ。
もちろん“バックステージもの”としても十分に楽しめる作品であり、西村雅彦演じるドレッサー=ノーマンを始め、座長の周りにいる“芝居熱”に罹った登場人物たちがそれぞれによく描かれている。劇中劇の嵐の場、座長に非協力的だった役者が思わず効果音の雷鳴板に飛びついてしまうシーンでは、今回もまた、涙が出そうになった。
9月8日@PARCO劇場