グレゴリー・ドーラン演出『ヴェニスの商人』2007年09月21日 23時26分37秒

蜷川のパートナーとしても知られた英国のプロデューサー、セルマ・ホルト女史とホリプロが組んだ新しい企画。RSC等で活躍する演出家グレゴリー・ドーランを招いての日英共同制作によるシェイクスピア劇である。

開幕前から観客をヴェニスのカーニヴァルの雰囲気へと誘う仕掛けが施されているあたり、ちょっと串田和美演出も思わせる幕開け。端正な演出に実力のある役者たち(脇も含め蜷川組で育った連中が活躍)が応えるかたちで劇は進む。

今回の舞台、藤原竜也がパサーニオ役と知った時には、人気俳優を起用するにしては地味な役柄と首を傾げたのだが、“箱選び”の場面でパサーニオの前に登場する二人の求婚者、モロッコ大公とアラゴン大公をも彼が演じ分ける趣向が仕組まれていた。ここの弾けた芝居が絶品で一気に舞台がヒートアップする。パサーニオを演じる時も、寺島しのぶ(彼女の実力もいかんなく発揮されている)演じるヒロイン・ポーシャとの掛け合いが面白く、後半の恋愛喜劇のパートまで実に楽しく仕上がっている。

一方のシャイロックには市村正親。単純な敵役ではなく、かといって人種差別の被害者という側面ばかりを強調すしぎるでもない、抑制の効いた好演でさすがの存在感。今回のシャイロックからは、差別に対する怒りよりも、最愛の娘ジェシカを奪われた悲しみがより強く感じられ、それがキリスト教徒全体への憎しみへと転化してしまったようにみえた。復讐に身を焦がしてしまう、哀れなる人間の性(さが)。

蜷川組は客席にも。オセロー(吉田鋼太郎)とデズデモーナ(蒼井優)が並んで座ってた。稽古休みの日だったのかな。10月の公演も楽しみ。

9月17日@天王洲銀河劇場