井口奈己監督作品『人のセックスを笑うな』 ― 2008年02月05日 20時08分18秒
またひとつ、女流の手による秀作。山崎ナオコーラの原作小説を、長編映画2作目の井口監督が映画化したもので、19歳の青年美大生と年上の臨時講師の女性を中心に、さまざまに交差する恋心のあれこれをナチュラルなタッチで描いている。
たわいない会話やなにげないしぐさ、わずかな表情の変化――、永作博美・松山ケンイチ・蒼井優らの細やかな演技を、ほんの少しもそこなうことなく映像へと定着させてゆく丁寧な作りに拍手。ベテラン木村威夫の美術もこの映画の魅力をより高めている。
1月27日@伏見ミリオン座
ケラリーノ・サンドロビッチ監督作品『グミ・チョコレート・パイン』 ― 2008年02月07日 00時03分41秒
原作は筋肉少女帯・大槻ケンジの小説。かつて有頂天を率いたケラがオーケンの指名で監督を引き受け、音楽には電気グルーブが参加。80年代インディーズの雄・ナゴムレコード人脈が再結集して送り出した、1986年のサブカルチャーかぶれの高校生たちのイケてなくてダサダサのリアル青春ストーリー。
時代を感じさせるアイテムがちりばめられ、小劇場系役者たちが随所でキツいスパイスを効かせる。曲者に囲まれながら若手俳優(石田卓也、黒川芽以、柄本祐ら)が演じる、とんがってるつもりで実はダメダメな少年たちの姿が懐かしくもいとおしい。並行して、21年後の大人になった彼らが抱えるめんどくさい日常の諸々も描かれる。このあたりの味わいは子どもには理解できまい。青春を遠く離れた者だけが知ることのできる感慨。
1月27日@伏見ミリオン座
ニ月松竹座・坂東玉三郎特別舞踊公演 ― 2008年02月11日 22時40分20秒
玉三郎が菊之助・海老蔵を引き連れての特別舞踊公演。華やかな顔ぶれに松竹座がわきたっている。
まずは海老蔵と尾上右近による『連獅子』。ついこの前まで團十郎との『連獅子』で仔獅子をやってた海老蔵だけに、親獅子というよりは兄獅子?という感じ。舌を巻いたのは仔獅子の右近。さすがに六代目菊五郎の血を引くだけのことはある。この若さで、なめらかでいて雄弁な踊りっぷり。毛振りも美しいこと。舞踊というのは芝居以上に天賦の才能がものをいうのだなあ。右近は将来、亀治郎や勘太郎と共に歌舞伎舞踊を背負っていくことになるのだろう。
平成16年に初演された玉三郎・菊之助による新演出の『京鹿子娘二人道成寺』が関西初登場。それぞれに魅力ある『娘道成寺』を足して2で割らない贅沢。眩暈がするような美しさ。三演目とあって菊之助も自信を深めたか、玉三郎を向こうに回して堂々としたものだ。もちろん玉三郎も絶品。二重写しの趣向の中に安珍清姫伝説の物語性がくっきり。「恋の手習い」のくだりの艶やかで細やかな表現を堪能(今回は奮発して2列目だったしね。玉様の投げた手拭いもget)。
また今回は、初めて海老蔵の押戻しがついた。“歌舞伎の華の押戻し”の科白にふさわしい成田屋宗家の御曹司が加わって、一段と幕切れの華やかさが増した。芝居がはねたあとも、観客席に興奮が残っていたのが印象的。
所見日:2月10日
柴田一成監督作品『リアル鬼ごっこ』 ― 2008年02月12日 18時31分57秒
日本の“王様”の命令で、全国の“佐藤さん”の数を減らすための命がけの鬼ごっこが始まる――、原作は1981年生まれの作家山田悠介が19歳時に書いた処女作だそうだ。“鬼ごっこ”という懐かしげなモチーフを用いつつも、いかにもゲーム世代的な世界観を感じさせる。監督・脚本の柴田一成は、映画的なリアリティを与えるためだろう、新たに“パラレルワールド”という仕掛けを付け加えており、これが成功。往年のNHK少年ドラマシリーズを髣髴とさせる雰囲気を持った作品になった。
『グミ・チョコ…』の石田卓也がやんちゃで真っ直ぐな少年を演じて○。良い意味で古典的な主人公。虚構を成立させるための細部の描写が甘い作品の中で、文字通り全力疾走の演技によってその欠点をカバーしてもいる。主人公の妹には『カナリア』の谷口美月。パラレルワールドの異なるキャラを演じ分ける等、大切な役どころをつとめてさすがの出来。
数少ない大人の登場人物にも柄本明・吹越満・品川徹とこだわりの感じられる配役がなされていること、彩りに松本莉緒が配されているあたりもオジサンとしては嬉しいところだ。
2月11日@109シネマズ四日市
中村義洋監督作品『チーム・バチスタの栄光』 ― 2008年02月13日 12時56分43秒
原作は「このミス」大賞受賞作ということで気にはなっていたのだが、未読のまま先に映画を観ることになった。
主人公は竹内結子演じる心療内科医・田口(原作では男性だそうだ)。このオトボケキャラが導入部をうまく作り、遅れて登場する阿部ちゃん演じるトンデモ厚労官僚・白鳥(ちょっとやりすぎの感もあるが)が絡んでくるあたりまではなかなか期待させる展開だった。
だが中盤からは失速した印象。謎解きの二段落ちも物足りない。原作が世評どおりの「すごい」医療ミステリーだったのだとしたら、この作品はその魅力を映像化することには失敗したのだろうと判断するよりない。
2月11日@109シネマズ四日市