長塚圭史作・演出『アジアの女』 ― 2006年10月16日 00時39分53秒
小劇場を横断する舞台と対面式の客席。2004年に同じ場所で上演された『胎内』(三好十郎作)の装置を思い出させる。その舞台を演出した新国立劇場芸術監督・栗山民也が、2005年鈴木勝秀演出の『胎内』(これは見逃した)に役者として出演した長塚圭史にオファーを出しての企画。1949年に書かれた『胎内』に相次いで取り組んだふたりの演劇人による、2006年時点での変奏曲という趣である。
震災後の崩れた街、潰れた家で暮らす兄妹――、妹はかつて心を病んでいたらしい。グロテスクな描写ばかりが喧伝されがちな長塚だが、あえてそうしたピークの瞬間ではなく、その後の危うい安定の時間を描いているのが新味。
富田靖子演じる妹を、こわれもののように気遣う兄に近藤芳正。親しい者が壊れていく姿に直面した家族の「折れた心」を描いて秀逸。彼らに関わる才能のない作家役の岩松了、善良なボランティアリーダーのふりをした女役の峯村リエが文句のない芝居。彼らキャストの実力が、緊密な2時間の構築に大きく寄与している。カーテンコールを拒絶し、断ち切るような幕の引き方も印象的だ。
10月9日@新国立劇場小劇場