新宿梁山泊『YEBI大王』2006年10月05日 00時12分22秒

2002年に発表された韓国の戯曲『エビ大王』を、在日コリアン・金守珍が率い韓国演劇界とも交流の深い新宿梁山泊が上演するというのは、ごく自然な流れだろう。だが、日本での上演としては筧利夫を座頭とするTeam ARAGOTOが先行し、成果を収めている(2005年)。結果、梁山泊版は単に優れた海外戯曲の紹介にとどまらず、その独自性を示すことが求められることになったわけだが、残念ながら、韓国、東京での上演を経て大阪での千秋楽を向かえたこの日の舞台でも、そのハードルをクリアできたとは言い難かった。

現代戯曲には珍しいほどスケールが大きいこの作品に対し、一見ダイナミックなようでいて実は繊細な金守珍の演出家としての特質がいまひとつマッチしていない。うまくハマれば師匠・唐十郎譲りの猥雑なエネルギーの表出につながる大衆演芸的なユーモア感覚も雑味になってしまった。それでも往時の梁山泊なら集団としての腕力で強引に作品として成立させただろうが、キャストの1/3が殺陣集団・武人会の客演とあって演技が全般に単調、久々出演のベテラン黒沼弘己の奮闘頼みという状況ではいかんともしがたい。せめて近藤結宥花が出ていればなあ。

ただし、本作は今後海外公演も含め再演を重ねるようだ。そうやって練り上げ、磨き上げていくのも梁山泊流。骨太な戯曲だけに取組み甲斐はあるだろう。

男子の世継ぎだけを求めるエビ大王。昨年観たときは、儒教的な男権思想の根強い韓国らしいな、と感じたのだが……、何も海の向こうの国に限ったことではないね。つかこうへいが今年の『蒲田行進曲』を「城崎非情編」としたのもそうした認識に基づくものだったのかもしれない。

10月1日@ウルトラマーケット