alan 1st concert - voice of you -2010年01月16日 00時01分06秒

チベットから来た歌姫の初めてのワンマンライブ。前半は作秋リリースされた2nd Album『my life』が中心で、「とびきり可愛いポップシンガーのステージを楽しむ」という水準にとどまるが、インターミッションで後方のスクリーンに映し出されたチベットの風景を合図のようにして、中盤からalanの最大の武器である独特の高音唱法(チベットフェイクというそうだ)が全開になり、日本デビュー曲「明日への賛歌」を筆頭としたナンバーで会場を圧倒。カラオケで消費されることを拒絶するalanの歌声。中国語で歌う映画『Red Criff』主題歌「心・戦」も出色だ。

見かけは華奢だが、平和や環境をテーマとしたスケールの大きい歌詞が似合う。大陸に生まれ育ち、自身、海を渡り国境を越えてきたからだろう。半径数メートルの範囲にしか想像力が及ばないJ-POPに飽きた耳に、新鮮に響く。

1月14日@Zepp Nagoya

面影ラッキーホールLIVE2010年01月13日 19時00分12秒

2010年のエンターテインメント初めは劇場でも映画館でもなくライブハウス。面影ラッキーホールの新春ライブである。

傑作「パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏」で一目惚れならぬ一耳惚れしたバンド。予備知識はアルバム『Whydunit!』だけで臨んだが、その他の代表曲等も生で聴くことができて、一部で熱狂的に支持されている面ラホの世界を堪能した。

面ラホの魅力は、第一にその歌詞にある。ヴォーカルも務める佐々木“ACKY”あきひ郎が書く歌詞は、歌謡曲がJ-POPへと堕落する過程で失ったドラマ性を保持しており、しかもそれが歌謡曲絶頂期に鎬を削った阿久悠、阿木燿子という天才二人に匹敵する高い水準である。 そして70~80年代の阿久・阿木に対する面ラホ詞世界の独自性は、徹底して夢がないことである。バブル崩壊過程で世に出たバンドにふさわしい身も蓋もないリアリズムで、性愛の闇や救い難い不幸を描く。 加えて重要なポイントは、ACKYの声質を最大限に活かしたムード歌謡を思わせるメロディラインである。しかし昭和のムード歌謡のようなファンタジーは面ラホにはない。徹底して残酷な不幸を、甘やかに歌うのだ。

不幸せこそが甘美であるという倒錯。鶴屋南北『桜姫東文章』の僧・清玄が体現したような、破滅あるいは落魄の愉悦がここにはある。

前座に劇団☆新感線の舞台にも出演している「ヘビメタですんません」なバンド、The冠。インターミッションには漫画家・大橋裕之による紙芝居二題、「転校生は脳」と「マンガヤクザ」。サブカルな夜。

1月9日@渋谷 CLUB QUATTRO

山下洋輔トリオ復活祭2009年07月25日 00時00分26秒

7月9日、平岡正明が逝った。享年68歳。四十九日もまだ明けていないのだ。きっとその魂魄は、この夜、日比谷の森に来ていたはずだ。

かつての平岡の盟友・相倉久人は健在、山下トリオ結成40周年のステージで司会を務める。第4期から第1期へと遡る構成。私がリアルタイムで聴くことができた1980年代のセットからスタート。山下と小山彰太に、林栄一、国仲勝男、故・武田和命の代役として参加の菊池成孔がからむ。武田作曲の『ジェントル・ノヴェンバー』に泣く。続いて第3期、坂田明登場。モントルージャズフェスの再現、『バンスリカーナ』『ゴースト』で客席が湧く。休憩をはさんで第2部へ突入し、いよいよ森山威男登場。曲は『クレイ』と『キアズマ』。30年を経た現在でも、やはり山下・森山・坂田の第2期が絶頂期だったのかと思わせる素晴らしさ。ラストは初代ホーン奏者中村誠一の第1期、名曲『木喰』『ミナのセカンドテーマ』で〆る。アンコールは全プレイヤーが揃っての『グガン』。何という贅沢な一夜。

中盤、西の空にみごとなまでに鮮やかな虹。ジャズと革命の師を悼みながら、最強の音楽に酔う。

7月19日@日比谷野外音楽堂

真心一座身も心も『流れ姉妹 たつことかつこ~獣たちの夜』2009年03月16日 00時01分00秒

異色小劇場ユニットのシリーズ物、“第三章”にして初の名古屋公演。オープニング映像を観ている間のワクワク感は随一。どこへ向かってゆくのか見当もつかなかった旗揚げ(第一章)や第二章ほどのテンションはなかったが、マンネリをお約束に昇華させる段階に入った作品のゆるい魅力はなかなかのものだ。

三代目ゲストレイパー&ゲストラバー(高橋和也・中村倫也)が初代(粟根まこと・松重豊)・二代目(高田聖子・相島一之)に比べればやや薄味なのは否めないが、千葉雅子脚本が与えた役どころの妙がそれをカバー。芸達者なレギュラーメンバーのアンサンブルに、栄えある初代ゲスト・マザーに招かれた木野花の存在感も加わり、今どき珍しい丹精込めたお馬鹿芝居が味わえる。

このシリーズは客入れの音楽もいい。野坂昭如『マリリン・モンロー・ノー・リターン』等、昭和のカルト歌謡で雰囲気を盛り上げてくれるのだが、その中に圧倒的なインパクトを持つ曲があった。ムード歌謡っぽい曲調ながら、その歌詞から古い歌ではないことは分かる。家に帰って調べてみたら面影ラッキーホールというバンドの『パチンコやってる間に産まれて間もない娘を車の中で死なせた…夏』(2007年)だとわかった。「ジャパニーズポップスシーンに一石を投入」したと評価されたものらしい。なるほど、みごとな詩(うた)である。

3月8日@テレピアホール

ヒカシューLIVE2008年05月01日 00時08分02秒

ライブハウスなんて何時以来だろう?

結成30周年を向かえるヒカシューの新作アルバム『生きること』発売に合わせたライブツアーの初日に出かけた。

メジャーデビューこそテクノポップブームのさなかだったが、30年という歴史が、彼らが単に時流にのっただけのバンドではなかったことを証明している。絶対無比のノンジャンル。新譜からのナンバーは即興性を重視したものだが、稀代のヴォイスパフォーマー・巻上公一を中心とした、不穏でポップな音作りが健在で嬉しい。結成時からのメンバーでもある三田超人のギターの味わいもヒカシューならでは。

バンド自体は現在進行形ながら、私を含めたオーディエンスサイドにはやや懐古趣味も? そこもふまえて、エンディングからアンコールは『パイク』『プヨプヨ』、そして『20世紀の終わりに』で〆る心配り。大人だね。新作から初期傑作群まで味わえて満足の2時間。

4月29日@名古屋CLUB QUATRO