唐組『ジャガーの眼2008』 ― 2008年10月19日 19時21分10秒
♪この路地に来て思い出す/あなたの好きなひとつの言葉
名作『ジャガーの眼』が紅テントに帰って来た。
85年、晩期状況劇場で初演、89年初期唐組で再演された作品。95年の再々演は観ていないが、これは大きく改訂されたものだったようで、今回の『ジャガーの眼2008』は原作に戻ったかたちだ。で、これが大当たり。初演・再演を越え、近年の唐組公演の中でも群を抜く出来映えである。
ここのところ健闘が目立った赤松由美が、ジャガーの眼を追う女・くるみに抜擢され◎。85年田中容子・89年藤原京以上に、この健気なヒロインにふさわしい情熱を見せる。今回は人形サラマンダ役に回った藤井由紀もこれを美しく演じて○。ジャガーの眼を持つ三人目の男となったシンイチに久保井研を起用したことも成功。ありふれた人生を送ってきた男の戸惑いがより際立ち、在りえないロマンの輝きがいやます。
初演時、唐が演じた探偵・田口に稲荷卓央。85年は六平直政、89年には大久保鷹が演じた探偵・扉に鳥山昌克。85年金守珍の怪演で知られる“肉体植民地”ドクター弁(89年再演時は唐)に丸山厚人。伝説的な役者達のイメージを凌駕する現・唐組の充実振りに目を見張る思い。
唐自身は商人・闇坂という新キャラで出番控えめ。愛犬チロの亡骸を抱いた少年を娘の大鶴美仁音が演じているのは御愛嬌。
10月12日@井の頭公園内三鷹の森ジプリ美術館隣木もれ日原っぱ紅テント
野田秀樹作・演出『The Diver』 ― 2008年10月18日 00時00分23秒
世田谷パブリックシアターの芸術監督・野村萬斎が仕掛ける「現代能楽集シリーズ」、第四弾にして野田秀樹登場。シアタートラムでは昨年の『The Bee』日本語版・英語版連続上演の実績があるが、今回もイギリス・ソーホーシアターとの共同制作で、イギリス人俳優を起用しての英語上演である。
能の『海人』と「源氏物語」、さらに現代の殺人事件を重ね合わせた作品。野田にしては珍しい色恋沙汰中心の話であり、現代の事件も手垢のついたような不倫に起因するもの。さらに精神科医が容疑者の責任能力の有無を調べる――、という枠組みなど、この現代能楽集シリーズの先頭打者だった川村毅(『AOI/KOMACHI』)の書きそうな台本である。
イギリス人俳優に、こうした物語を理解させ演じさせるための戦略ということもあろうが、野田独特のイメージの展開力がやや控えめになった感は否めず。西洋人に象徴的な身体表現を求めたという意味では意欲的で実験的な作品ということになるのかもしれないが、日本人俳優による日本語上演だったとしたら、もっと物足りない印象になったのではないか。
10月12日@シアタートラム
蜷川幸雄演出『から騒ぎ』 ― 2008年10月17日 00時02分30秒
彩の国シェイクスピアシリーズ(SSS)第20弾にしてオールメール4作目は、高橋一生演じるビアトリスにすっかりやられちゃった。
数多の若手男優の中でも癖のある役作りで独特の個性を持つ高橋だが、女性を演じてこんなに可愛くなるとは! いつものオールメールなら月川悠貴に眼を奪われるところなのだが今回ばかりは高橋に釘づけ。
初舞台で主役級のベネディックに抜擢された小出恵介は、味付けの濃い蜷川組の中で一服の清涼剤。吉田鋼太郎・瑳川哲朗のベテランコンビが茶目っ気全開で喜劇を運び、町の人々も個性豊かに楽しく。また物語の影の部分を担う役で大川浩樹が健在ぶりをみせる。オールメールも成熟の域だ。
10月11日@彩の国さいたま芸術劇場大ホール
ジョン・ケアード演出『私生活 Private Lives』 ― 2008年10月16日 00時23分25秒
イギリスの劇作家が1930年に書いた洗練された喜劇。日比谷の洒落た劇場シアタークリエにふさわしい作品だが、これが初共演となる文学座研修所の同期生・内野聖陽VS寺島しのぶのガチンコバトルによって、洗練されたとか洒落たとかいう形容詞を超える面白い舞台になっている。中嶋朋子・橋本じゅんも好助演。
終幕の“もうひとひねり”は戯曲にはないアイデアだそうだ。このカンパニーの稽古の中で演出ジョン・ケアードがひらめいたらしい。お見事。
10月11日@シアタークリエ
新橋演舞場新秋九月大歌舞伎〔夜の部〕 ― 2008年09月30日 00時08分31秒
時蔵の尾上に、亀治郎のお初×海老蔵の岩藤での『加賀見山』通し。もともと面白く出来た完成度の高い作品だはと思うが、若い亀・海老の観客を魅きつけるスター性が加わって、上出来のエンターテインメントに仕上がっている。この組合せは今後も楽しみ。
夜の部の最後に、同じコンビでの『かさね』があったのだが、後ろ髪を引かれつつパス。
所見日:9月15日